B型デザイナー・タカの趣味日記


by samune_3
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【ボラ記2】天使のバトン

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いきなり閉鎖されてしまったボランティア事務所から
旅立って、小1時間ほど自転車を漕いだだろうか。
運動会などで使うような大型テントが複数建ち並んだ
広い公園が見えてきた。
そして、テントには『ボランティア本部』の看板が。

「あったぁ!やっと着いた・・・」思わずつぶやく。


看板がついたテントに入ると、中には数人の男女。
20代から上は40代半ばといったところか。集まって
何か相談していた。誰もこちらには見向きもしない。

「あの〜」つっ立ってても仕方ないので声をかける。

40代前後の女性が振り向き「はいはい」と笑顔で
応対してくれた。僕は今ここに着いたことを話した。






言われるがままに登録用紙に住所と名前を記入、
白紙のネームプレートを渡された。

その女性の名前はミサワさん。
ミサワさんは最初の笑顔を崩すことなく、親切丁寧に
ここの団体の現状と活動のシステムを教えてくれた。


基本的にボランティアの活動は依頼から始まる。
不足物資の配達や倒壊家屋からの家財道具の運搬など
多くは区内の被災者個々からの依頼だが、炊き出しの
補助や夜警など区役所や町役場からの依頼も含まれる。

依頼内容・時間・必要人数・条件が記載された用紙が
テント内に掲げられたベニア板『おしごと板』に随時
貼り出されるので、各自でそれをチェックし参加する
依頼にサインを入れる。定員に達したら締切りだ。


本部テントの隣に建つ同様のテントが寝床になって
いたので、そこに荷物を置いて早速仕事を探す。

当然、選り好みする気などなかったが、ほとんどが
すでに定員に達している。さて、どうしよう?


しばらく悩んでいると、ポン!と肩を叩かれた。

見ると、背の低い可愛らしい女の子がニコニコして
じっと僕の顔を見ていた。照れるのでやめてほしい。

「いま空いてます?」

いきなりこう聞かれてビックリしつつも、とりあえず
何か手伝えることがありそうなので「はい!」と即答。
「良かったぁ!じゃあ一緒に来て下さい」と女の子。


彼女のあとをノコノコついて行く。
なんの仕事だろう?男手が必要な力仕事とかかな?
どんな内容であろうと手伝うことに変わりはないので
特に聞かなかった。彼女の方も何も語らなかったが、
表情や足取りから何となく嬉しそうに見えた。


公園のすぐ近くには区役所があり、彼女の向かう先は
そこだった。建物に入り、多目的ホールと書かれた
扉を開けると、中は避難所になっていた。
床には畳やゴザ、毛布などがビッシリと敷き詰められ
家財道具などで世帯ごとのスペースが作られていた。

時間は午前10時くらいだったと思う。
ほとんどの人が外出していたのか、避難所にいたのは
20人前後のお年寄りだけだった。
皆、特に何をするでもなく、うつむき加減で自分の
スペースに座っていたが、彼女が入ってきたことに
気づいた途端、満面の笑みを浮かべて彼女の元へと
集まってきた。
僕は隠れるように彼女の背後に立っていた。


腰が曲がったおばあちゃんも足が悪いおじいちゃんも
よいしょよいしょと彼女の回りに駆けつける。
なんだ?何が始まるんだ?彼女はいったい何者?

「あんた、明日帰るってホンマなんかな?」
「あんたの顔見るんが毎日楽しみやったのになぁ」

そう彼女に話しかけたおばあちゃんは涙ぐんでいた。


彼女とお年寄りたちのやり取りを外野から聞いていて
やっと状況が見えてきたので頭の中で箇条書きにした。

・彼女は、関東から来た看護学生で明日地元へ帰る。

・彼女は、毎日早朝と夕方、ポットにお茶を沸かして
 避難所を回っている。お茶出しを考案したのも彼女。

・さらに朝食・昼食・夕食の弁当配布でも回るので
 一日計5回、被災者を訪ねて話し相手や手伝い。

・彼女の、いつも笑顔を絶やさずイヤな顔ひとつせず
 被災者の相談にのる姿は、まさに天使。


僕はここに来たのすら今日初めてで、彼女に出会って
まだ1時間も経っていなかったが、避難所の人たちが
彼女に向ける絶対的な信頼と感謝の気持ち、そして
日々癒されていたその笑顔に今日限りで会えなくなる
悲しみが痛いほど伝わってきて、胸が熱くなった。

別れを惜しむおばあちゃんの手を握り、咳き込む
おじいちゃんの背中をさすりながら、彼女は

「今日はどうですか?何かいる物あります?」

ウエストポーチからメモ帳とボールペンを取り出して
ひとりひとりから注文を取り始めた。
「長袖肌着1枚」「膝下までのクツ下」「歯ブラシ」
被災者の名字と注文内容を素早く書き留めてゆく。


『このコ、本当に凄いなぁ・・・
 ボランティアって力仕事や雑用がメインかと
 思ってたけど、こんな凄いコもいるんだなぁ』

最後の最後まできっちりと物資の注文まで引き受ける
彼女のきめ細かな活動ぶりに心底感動しつつ、
自分もできる限りの事をして少しでも被災者の役に
立てるよう頑張ろう!と、気持ちを新たにした。


しかし、注文を書き終えた彼女のひと言は、そんな
生半可な決意をあっさり打ち砕くものだった。


「明日から彼が、私の代わりに回りますから!」

「・・・は?」


つづく
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by samune_3 | 2011-03-16 11:31 | ボラ記